鎌倉好き集まれ!E.Karashimaさんの鎌倉リポート・第2号(2007年6月16日)

甘縄神明神社のタブノキ

 長谷の鎮守さま、甘縄神明神社に行ってきました。和銅年間(708~715年)にこの辺りの豪族、染谷太郎時忠(そめやたろうときただ)が建てた鎌倉で一番古い神社といわれています。まつられているのは、太陽の神様、天照大神。甘縄の「甘」は海女のこと、「縄」は漁をするときの縄の意味だろう、といわれているそうです。昔の人々は、お日様や海など、日々恵みを与えてくれる自然に、神様を感じていたんでしょうね。
 境内は木立に囲まれていて、石段を上ると、涼しい風が吹き上げてきます。木の葉が風に揺れサワサワ鳴って、長谷駅からそれほど離れていないのに、深い森に包まれた感じで心が静かになります。これは、鎌倉と三浦半島の古木・名木50選に選ばれている境内のタブ。深い鎮守の森の高台に、のびやかに立つ姿を見ていると、すがすがしい気持ちになります。
 タブの木の根元に立って、幹を見上げてみました。大らかで、たくましい感じです。甘縄神明神社は、伊勢別宮とも呼ばれ、源頼朝や政子もお参りしたそう。このタブは、どんな景色を見てきたんでしょう…。
 タブの葉っぱです。照葉樹らしく、つやつやしています。これなら潮風にも強そう。
 少し遠くから見たタブの樹形。海岸が近い長谷では、周りの森にも、タブがたくさん自生しています。全体に、こんな感じのこんもりした木々が茂る森です。
 境内には、秋葉社という山岳信仰にまつわるお社があり、そこに至る階段を少し登ったところから、タブを見下ろしてみました。周りの木々と調和して、ちょっとスリムに見えます。
 木々の間から、海も見えました。このタブは、長谷の町や海を見下ろして立っているんですね。
 甘縄神明神社のそばに、川端康成の家があったそうです。川端康成の小説「山の音」には、主人公・信吾の家の裏山の神社として、甘縄神明神社が描かれています。
 「鎌倉のいわゆる谷の奥で、波が聞こえる夜もあるから、信吾は海の音かと疑ったが、やはり山の音だった。遠い風の音に似ているが、地鳴りとでもいう深い底力があった。」
 こうした場所に来ると、自然への畏敬の念というものを、確かに感じる気がします。