鎌倉好き集まれ!JUNEさんの鎌倉リポート・第32号(2004年12月1日)

slowly but surely (2/2)

絵手紙

昭和45年、立子は突然脳血栓に倒れ、右半身麻痺に。

しかし、「生きる」ことを諦めず、
左手で習字の練習を始め、
やがて絵手紙も描けるように。

赤鉛筆を左手に、鎌倉の四季を数多く詠んだ。

《春寒し赤鉛筆は六角形》
昭和59年3月3日、立子は80年の生涯を閉じる。
父 虚子と共に寿福寺に眠る。

立子が、出先でつい衝動買いをしてしまったという
木目込の雛飾り。
一つ一つ、人形の優しい表情に、
写真の中の朗らかな立子の面影を重ねて。

《雛飾りつつふと命惜しきかな》

雛飾り

The landscape painter

談話室から、誰も居ないウッドデッキのテラスに出る。
庭を見ると、
一人の男性が芝生の上に腰をおろし、水彩画を描いている。
その向こう、うっすら広がる鎌倉の海。
何艘ものヨットの帆がたなびき、凪いだ水面がきらきらと光る。

こげ茶色の椅子に座り、ぽかぽか柔らかな陽射しをあびながら、
ぐぅーっと両手を上に伸びをする。

ふと、
父のことを思った。
そして、
父に会いたくなった。