トップ鎌倉好き集まれ!もちださんトップ 第177号 


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もちださんの鎌倉リポート No.177(2015年11月25日)



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キッチュ探訪・2



円覚寺
 国木田独歩の小説「鎌倉夫人」1902をおもいだす、どうにもマダムな石仏。主人公が海岸橋あたりの砂丘(当時)で釣りをしていると、別れた妻がまた男をたらしこんでいるのを目撃。好色妻の話はけっこう反響をよび、吉井勇が「第二鎌倉夫人」というのを書いているし、戦後「薪能」でしられる在日の作家も、同名の本を書いた。

 独歩は権五郎神社のほとりにすんだ。「運命論者」は近親相姦に気づいた男がショックのあまり同じ砂丘に酒瓶をかくして死ぬまで呑みつづけている話。どれもプロットが古くて単純。ゾラやモーパッサンには程遠いが、こんなのを自然主義文学とかいっていた。

 常盤から月影谷に野蒜(のびる)をもとめてあるいた「鎌倉の裏山」という随筆には、鎌倉ハムがでてくる。野蒜というのは豆粒ほどのたまねぎ根がくっついた野草。土手などにふつうに生えてはいるけれど、さすがにいまは、犬のおしっこがかかっているかもしれないし。


 由比ガ浜通りの六地蔵にいるすずめ。なかなかかわいらしいので盗難の被害もあるのだとか。おそろいのが売ってたらいいのに。江ノ電の江ノ島駅前の柵にくっついた雀像も有名。そちらはひとが柵にすわらないように、いやがらせ目的でわざと設けたものらしい。

 さいきんではベンチなんかでも、「ルンペンが寝ないよう」まんなかあたりに「手すり」をつける自治体がおおいが、寝ころがりたいのはホームレスだけじゃない。立ちくらみになった人、背筋が痛い人だっている。自分にとっては「無限の正義」が、別の人にとっては「深刻な悪意」になるということも、理解しなければいけない。で、こっちの雀の勝ち。



龍宝寺
 ちっちゃい仏像はなんだかチープな伏見人形(饅頭小僧)のよう。「割った饅頭、どっちも好きや」という、あれ。へんに古色がついていると盗むやつもいるから、これはこれでいいのかも。

 これは龍宝寺の八大竜王。鎌倉では北条政子や時宗、足利尊氏やなんかも近世のミニチュア人形になっていくつかの寺に祀られている。べつに複数の肖像画などがのこる例からみても、その「似ていない」度は久月の変わり羽子板・東玉の変わり雛級。ちょっと大き目のものでも、ぷくっとした円成尼とか、超下膨れの大休正念、渡辺哲似の北条時頼など、おもしろいものが少なくない。

 ちっちゃい仏像は宮殿逗子のなかにいれ本堂の後陣・うしろ戸におかれていることが多い。そんなのを「発見」してゆくのも寺めぐりの醍醐味なのだが、ざんねんながら安養院などでは、盗難いらい本堂そのものを閉鎖してしまった。



金沢八景・下馬交差点
 「ゆるキャラ」ブームもひさしいが、なぜか鎌倉にかわいらしいキャラクターはいない。江ノ電の「えのん」なんかはたまにみるが、「おちむん」以下はいまひとつ。世界遺産にも落選し、縁起でもないしろものだ。きもキャラ狙いがすぎるのか、美少女キャラ鎌クララとか鎌くらりんとかいった、ベタな子はいそうでいない。児童公園の動物型遊具なんかも、既製品なのか、ありふれている。

 アニメなんかには、けっこう詳しく鎌倉の風景をえがいたものもあるようだ。最近はリアルに町並みを再現したバーチャル‐ゲームもあり、アニメと連動した「聖地めぐり」なんかもあるから、写実には相当気を使っているらしい。ただ、著作権もあるらしく街角で見るのはまず、こんなのばかり(右)。こんなのに萌えるマニアはけして若くはないだろう。



雑誌に多い聖地特集
 「巨人の星」あたりではだいぶむちゃくちゃな背景がかかれていた。左門に打たれた飛雄馬は鎌倉の山寺に座禅に来る。そこの若いの、警策に打たれまい、打たれまいとするからうたれるのじゃ。打ってくれとおもうのじゃ。

 この言葉に悟るところのあった飛雄馬は、歓喜のあまり山頂の鼓岩にかけのぼり、町のほうへと石を投げる。左門や花形の勝ち誇ったすがたにぶつけてやったつもりなのだが、これはきわめて危険な行為。観光マナーとしても最悪だし、そもそも鼓岩は尾道で、鎌倉にそんな場所は存在だにしない。

 むかしは観光マナーも相当わるかったから、大量の空き缶なんかをあつめて、学園祭かなんかで建長寺前にゴジラ像をつくってあったのを、おぼろげにおぼえている。


 古いといえば戦前の人気漫画家、横山隆一(1909-2001)というひとの邸宅跡が、ちょっと前から市役所まえのスターバックスになっている。故人や遺族のご意向とかで庭のプールや藤棚、アトリエや旧外壁などのふしぎなイラストがのこるほか、ヒット作「フクちゃん」の原画なども飾られていて、これもあるいみ、シュール。

 おなじみなのは崎陽軒のひょうちゃん。シウマイ弁当にはいっている醤油さしで、一時ちがう方々のデザインにかわったが基本的には復活したようだ。僭越ながら「極端にへた(うま?)」なのが横山先生の原画にもとづくやつ。もちろんそれとこの店の壁画のテイストとは、ぜんぜんちがう。一風変わった画風による氏のイラストは、駅横の連絡通路なんかにもかざられている。


 小町通りには、あいかわらず「鎌倉ずきん」とか、毎度へんちくりんなものを売っているが、店の看板オブジェにもたまにおもしろいものがある。これはアイス屋さん。牛に愛想がないところが自然でいい。たぶんミルクがじまんなのだ。
 
 手芸っぽいものは、みる人に媚びない。芸術でもなく客寄せでもない。評価されようとも思わないから、いい意味での脱力感、ナンセンスさにあふれている。くだらない彫刻なんかより、ぬいぐるみのほうがずっと自由。なにが高級でなにが低級かなんて、だれにも決められないのだ。


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