県立歴史博物館で先月までやっていた「相模川流域のみほとけ」という特別展をみた。蘭渓の高弟・葦航道然の頂相をみるためだ。葦航の肖像は他になく、しかもこれが円覚寺につたわる「大休正念像頭部」(左)ににているという説もある。目じりに太くたれさがる眉、下膨れで繭のようにくびれた輪郭、蝶形の耳。そしてなんといっても、おでこと頭の境目が、稜をなして角ばっている点。よこから見ると額の生え際の尖りぐあいは尋常でなく、ハンチングのようなものをかぶっているかのよう。五分刈りが伸びて、前髪が張り出した表現? あるいは実物の僧帽のようなものを着せるばあいに、布地の据わりがいいように、彫刻上の工夫であえて尖らせたのだろうか。
鎌倉におけるの所縁寺院はみな亡んでしまって、蘭渓の四神足のひとりとされながら、葦航の伝記は簡単にしか伝わっていない。葦航とは達磨が葦の葉の舟にのって去った、という仙人伝説を号にしたものだから、本人はもっと痩せてたのかも。
これは厚木市依智地区にさかえた相模武士「本間氏」の氏寺・建徳寺につたわった。本間氏は佐渡へながされる日蓮に帰依したとされるが、現在日蓮寺院「星下り妙純寺」になっているぶぶんは舘址だから、舘が存続しているあいだは北隣の建徳寺・金田神社が氏神氏寺として機能していたはず。すなわち本間氏は禅を信仰し、日蓮が嫌う蘭渓の弟子・葦航を開山に請じていたようなのだ。
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