鎌倉好き集まれ!KIさんの鎌倉リポート・第108号(2008年8月26日)
【お盆特集②】 旧暦七夕とお盆
前回のお盆特集①では,旧暦の七夕がどんなものであったか話しました。現在よく知られている七夕まつりとはだいぶ形が異なっていること,さらに起源をたどればタナバタはお盆を迎えるためのお清め,またはお祓いの行事だったというところまでお話しました。
さて今回,現在でもなお盆行事と一体のものとして行われている七夕の実例をいくつか紹介したいと思います。
【事例1】鶴岡八幡宮の夏越祭(補足)
まずは,前回も紹介した鶴岡八幡宮の夏越祭の神事。古来のタナバタのお清め神事の実例として引き合いに出しましたが,今度は式次第を追って紹介します。
8月6日の15時。炎天下の中,社務所に整列した神職がぼんぼりの参道を下ります。そして,源平池のほとりに鎮座。大祓詞(おおはらえことば)を唱えた後,紙片と紙人形でサッと身体を払って,水辺でのお清めを完了します。その後,茅の輪くぐり,さらに舞殿での祝詞奏上,巫女神楽(夏越の舞)へと,神事は約1時間にわたって執り行われました。
水辺でのお清めを伴うこの神事を,前回のレポートで「水の潔斎を重要な要素とする原初タナバタの名残だろう」と紹介しました。現在,鶴岡八幡宮では,特にこれが旧七夕だという認識はないとのことでしたが,水祭祀を伴った,神社創建の頃から伝わる古いしきたりだろうとのこと。この八幡宮の夏越神事が古いタナバタ神事にルーツがあるとは断言できませんが,お互い「旧7月の行事」,「水によるお清め」という重要な共通点が見られるあたりは興味深いところです。
さて今回,現在でもなお盆行事と一体のものとして行われている七夕の実例をいくつか紹介したいと思います。
【事例1】鶴岡八幡宮の夏越祭(補足)
まずは,前回も紹介した鶴岡八幡宮の夏越祭の神事。古来のタナバタのお清め神事の実例として引き合いに出しましたが,今度は式次第を追って紹介します。
8月6日の15時。炎天下の中,社務所に整列した神職がぼんぼりの参道を下ります。そして,源平池のほとりに鎮座。大祓詞(おおはらえことば)を唱えた後,紙片と紙人形でサッと身体を払って,水辺でのお清めを完了します。その後,茅の輪くぐり,さらに舞殿での祝詞奏上,巫女神楽(夏越の舞)へと,神事は約1時間にわたって執り行われました。
水辺でのお清めを伴うこの神事を,前回のレポートで「水の潔斎を重要な要素とする原初タナバタの名残だろう」と紹介しました。現在,鶴岡八幡宮では,特にこれが旧七夕だという認識はないとのことでしたが,水祭祀を伴った,神社創建の頃から伝わる古いしきたりだろうとのこと。この八幡宮の夏越神事が古いタナバタ神事にルーツがあるとは断言できませんが,お互い「旧7月の行事」,「水によるお清め」という重要な共通点が見られるあたりは興味深いところです。
【事例2】いわき市の旧七夕
新暦の7月7日に行われることが多い七夕まつりですが,地域によっては今なお8月の頃,旧暦で行われるところもあります。例えば,仙台や東京阿佐ヶ谷での地元商工会が行う七夕イベント(月おくれの七夕)。
今から紹介する,福島県いわき市の七夕は旧暦で行われるだけでなく,お盆と結びついた「七日盆」のしきたりがみられます。
旧暦7月6日の夕方,藁または茄子や胡瓜でつくった馬を盆棚にそなえるところからいわきの七夕は始まります。この馬は「七夕馬」と呼ばれ,ご先祖様を迎える乗り物です。盆棚の準備と前後して行われるのが井戸掃除や墓掃除。七夕に,これらお盆の準備を整え,すっかり身辺を清めた状態で,お盆当日にご先祖様をお迎えするというわけです。
そして,いよいよお盆。先ほどの七夕馬に乗って,あの世から来るご先祖様のために,各家庭では夕暮れから門前で炭火を焚きます。昨年8月,自分もその光景を見ましたが,夕闇に赤々と焦げる迎え火は独特の風情でした。
お盆の間,供養やじゃんがら念仏踊りなどの行事が一通り行われます。特に,じゃんがら念仏踊りが,夕から夜にかけて寺院や各家庭をまわり,太鼓や鉦で激しく舞い,供養するとともに場を盛り上げる様子はいわきの夏の風物詩となっています。そして,お盆が終わると,ご先祖様は各家庭から再びあの世へ戻っていきます。その際,一昔前のいわきでは,七夕馬を川に流して先祖送りしていたそうです。
【事例3】 沖縄の旧盆
最後に紹介する事例は沖縄からです。いわき市の例と同様,ここでも旧暦の七夕はお盆とセットになっています。
沖縄の旧暦七夕には,ご先祖様を迎える準備として,墓掃除をします。そして,各家庭では,盆棚(精霊棚)に供え物やぼんぼり飾りを用意して,お盆の迎え日(ウンケー)に備えます。沖縄では旧七夕(旧暦7月7日)の1週間後には旧盆となり,祖先霊がこの世に戻ってくるとされています。
(※註)
沖縄のお墓の写真は下記の沖縄写真集より借用させていただいたものです。
http://gpzagogo.s8.xrea.com/index.html
沖縄の旧暦七夕には,ご先祖様を迎える準備として,墓掃除をします。そして,各家庭では,盆棚(精霊棚)に供え物やぼんぼり飾りを用意して,お盆の迎え日(ウンケー)に備えます。沖縄では旧七夕(旧暦7月7日)の1週間後には旧盆となり,祖先霊がこの世に戻ってくるとされています。
(※註)
沖縄のお墓の写真は下記の沖縄写真集より借用させていただいたものです。
http://gpzagogo.s8.xrea.com/index.html
この旧盆時期,沖縄を賑わすのがエイサー。各地域の青年会によって,エイサー隊(エイサーシンカ)が組織され,太鼓と手踊りの青年男女が数十人規模,多い団体では百人超の規模でエイサーをします。地謡(ジウテー)の唄サンシンにあわせて勇壮また華麗に舞い,だいたい旧盆の3日間,夜遅くまで地域集落を練り歩き,時には要請のあった家庭や店舗などを訪問演舞します。
その旧盆エイサーの伝統的な歌詞のひとつに.「七月(しちぐゎち)たなばた・・・」と歌われているものがあり,お盆と七夕が一体のものであることを表しています。この場合,「七月(しちぐゎち)」は旧暦7月のことであるのは言うまでもありません。
【おわりに】
以上,鎌倉(鶴岡八幡宮),いわき,沖縄において,旧暦七夕の事例を紹介しました。これらの旧暦七夕は3つとも神様や祖霊を迎えるための準備という意味合いが強く,皆さんがよく知っている笹の葉と短冊の七夕まつりとはだいぶ様相が異なっていましたね。
水祭祀やお盆(祖先神崇拝)と絡んだ旧暦の七夕行事が互いに遠く離れた3地域で見出せたことは,ひょっとすると,はるか古い時代に水と祖霊崇拝に基づく,原初のタナバタ信仰が日本列島に広く存在していたことを示唆するものかもしれませんね。
最後に,沖縄のところで紹介した,七月たなばたのエイサー歌謡『仲順流り』を,赤野エイサーの写真とともに紹介し,2回にわたったお盆特集を締めくくりたいと思います。
七月七夕(しちぐゎちたなばた) 中ぬ十日(とぅーか)
二才達(にーせーたー)や するとぅてぃ踊(うどぅ)ゆさや
五歳ぬ(いつぃつぃぬ)年に 親戻ち(うやむどぅち)
七歳ぬ(ななつぃぬ)年に 覚出ぢゃち(うびんぢぅち)
仲順(ちゅんじゅん)流りや 七(なな)流り
黄金(くがに)ぬはやしや 七はやし (沖縄市園田青年会エイサーの『仲順流り』より)