トップ鎌倉好き集まれ!KIさんトップ 第28号 


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KIさんの鎌倉リポート No.28(2006年12月20日)


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信州の鎌倉(その3)〜うえ電と江ノ電



収穫の終わった田んぼの中を走る上田電鉄別所線(舞田駅付近にて)
12月も下旬になり,紅葉の終わりとともにクリスマスのイルミネーションなどが年末の雰囲気を盛り上げています。こんな時期,かなり的外れであることを承知で先月旅した信州の鎌倉についてお送りすることをお許しください。
 先月に続き,シリーズ3回目の今回は,信州の鎌倉を結ぶ上田電鉄別所線の話をします。

長野新幹線を上田駅で降り,同じ駅舎の中,少し階段を上ったところに上田電鉄別所線(以後,「うえ電」と略す)の乗り場があります。上田駅を発車するとしばらく高架を,市街地を見下ろしながら走ります。そして,すぐに千曲川の赤い鉄橋にさしかかり,農村地帯へと繰り出していくのです。






コスモス咲く下之郷駅に停車する「うえ電」。下之郷駅のすぐそばには生島足島神社があります。
上田の鉄橋を過ぎて10分ほど,信州の鎌倉への玄関口の下之郷駅に到着。ここから先は民家もまばらになり,田畑と山々が織り成す信濃の田園地帯(塩田平)を,「うえ電」は駆け抜けていきます。ずっと広がる田畑の風景の中,中塩田駅,塩田町駅を経て,やがて湯気が立ち上る温泉地。終着の別所温泉駅には上田駅を出て約30分後に到着します。

 ちょうどこのあたりののどかな田園風景の中を走る小さな電車というのが「うえ電」にピッタリのイメージなのだと思います。

 自分,先月に1日フリー乗車券(秋期限定)を使って何度か乗り降りしましたが,スローライフな雰囲気でよかったです。沿線だけゆっくり時間が流れているような,どこか懐かしい感じでした。

ちょうどこのあたり,高架の藤沢駅を発車した「江ノ電」が,江ノ島,腰越駅を過ぎたあたりから海沿いを走行し,最も湘南の電車らしい雰囲気をかもし出すのと類似しているかな,と思うのですがいかがでしょうか。

 山に囲まれた里山と海風と波音が迫る海浜という違いはあるけれど,どちらも鉄道が地域の原風景にうまく溶け込んでいるように思えます。



ところで,「うえ電」は1921年に開通しました。近隣地域で相前後して他の路線も複数開通したそうです。この開通ラッシュの背景には,当時,塩田平周辺で繁栄していた養蚕業と別所温泉の存在が大きかったようです。

ちなみに「江ノ電」の開通は1902年です。
 


夕日の江ノ島をバックに走る「江ノ電」(鎌倉高校前駅付近にて)



別所温泉駅前にある「うえ電」の旧丸窓電車〜側面の丸窓(どこにあるかわかりますか)が特徴で戦前から1986年まで走行していた。
その後,「うえ電」と「江ノ電」は,戦争の混乱を何とか乗り越え,戦後の復興期には物資や疎開先からの引揚げ者の運送に一役買っています。ところが,1960年代の経済発展の時期を迎えるとバスや乗用車が次第に普及し,多くの地方鉄道は需要を奪われて窮地に追い込まれます。「うえ電」と「江ノ電」もこの時期,廃線の危機に直面します。

 「江ノ電」はその後間もなくテレビドラマがきっかけで全国的に起きた江ノ電ブームに救われますが,「うえ電」の場合はより深刻でした。近隣に4本あった鉄道路線もことごとく廃線になり,「うえ電」もとうとう経営陣が廃線を決定するところまで行きましたが,鉄道従業員と地元住民が失業問題や過疎化などに危機感を強め,根強く廃線反対や存続策の捻出などを行った結果,辛うじて廃線を免れたのでした。

一度は危機を乗り越えた「うえ電」でしたが,つい最近になって公的援助を受けるなど再び存続が危ぶまれる状況に陥ります。このときもまた,「うえ電」をよりどころとする地域の人々や児童・学生などから熱い支援を受け,「未来に残そう,別所線」を標語に,今に至るまで利用促進に向けた様々な取組みが行われています。2005年には,長年「うえ電」の顔だった丸窓電車がリニューアル復活し,地元利用者にも観光客にも親しまれています。

 本場の湘南鎌倉を走る「江ノ電」信州の鎌倉を走る「うえ電」

調べてみると,両者には意外な興味深い共通点がいろいろと見つかりますね。
・・・@観光地と市街地を結ぶ目的で創設された,A東急電鉄の傘下に入ったことがある,B全線が単線鉄道である,C駅の数が15駅である,D起点から終点までの所要時間が約30分である,E走行距離も約10キロである,F車両が鉄道友の会から表彰されたことがある・・・
などなど。


江ノ島駅前の踏切を走る「江ノ電」



夜の別所温泉駅にて,引退した旧丸窓電車(左)の横を現役の新丸窓電車(右)が走り抜けます。
でも,自分が思うに一番の共通点は,

地域に親しまれ旅人にも親しまれる,どこかノスタルジックな趣きがある電車

じゃないでしょうか。


「うえ電」も「江ノ電」も,今までそうだったように,これからもみんなの夢を乗せて走り続けていくのでしょうね。

(参考文献)
・ 夢と暮らしを乗せて走る別所線 -上田小県近現代史研究会編-
・ 江ノ電百年物語 -湘南倶楽部編-

追伸,
本文中で「うえ電」という語句を上田電鉄別所線の略称として用いましたが,本レポート中でのみ用いている自作の略称であって一般的あるいは公式なものではないことを申し添えます。また,信州の鎌倉シリーズ(3回)&首里の円覚寺と,4回も続けて湘南鎌倉から離れた地域をレポートしましたが,次回からはまた本場の湘南鎌倉に戻りますのでよろしくお願いいたします。



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