鎌倉好き集まれ!ISM-ingさんの鎌倉リポート・第11号(2005年3月8日)
腰越漁港の春
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黒沢映画「天国と地獄」にも登場の腰越漁港。
江ノ島からはご覧の通り指呼の間。
晴天に恵まれた3月5日土曜日、久々の鎌倉散歩を楽しみました。
周遊券「のりおりくん(B券/¥580)」片手に江ノ電の始発に
飛び乗って海を目指します。
腰越の駅で降りて漁港を覗いてみると…何やら意味不明の洗濯
バサミが一面に張り巡らせてあります。ハテ?いったい??
その洗濯バサミの量がハンパじゃない。さして広くもない漁港
ではありますが、何百ものブルーの洗濯バサミが何かを待ち構
えて早朝の薄明かりの中、微風に揺れているさまは壮観。
洗濯バサミのかたわらには小さな煙突を付けたデカい釜が数基。
そして浜の女性たちが忙しそうに火を起こしています。
わかった!これが有名な「シラスの釜あげ」か!!
ん?それじゃ洗濯バサミは何に使うんだ??
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洗濯バサミ越しに江ノ島展望台を望む。
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釜とおばあちゃん。これはワカメ干しを終えたあとの一枚。
釜は石油のボイラーで沸かします。
釜を炊いていたおバアちゃんが笑って「ワカメだよぅ。」
え?鎌倉でワカメ?8時過ぎにはワカメを積んだ舟が戻ってきて、
即座にこの釜で煮るのだそうです。すると茶色のワカメが瞬時に
美しい青に変わるんだとさ。う~ん、見てみたい!その瞬間!
でもまだ時刻は6時半。江ノ電でフラッとひと回りして8時ころに
帰ってくることにしました。
久しぶりの鎌倉に夢中になってるうちに、いつのまにか9時近く
になってしまいました。漁港に戻ると、さきほどの洗濯バサミに
茹で立てのワカメがズラ~~~~ッと干してありました。
その青さの美しいこと!おバアちゃん曰く、茹でる時のワカメの
分量が難しく、入れ過ぎると湯温が下がってムラになってしまう
のだそうです。また、茹で上がったワカメは冷たい水でさらして
さらに発色を良くするのですが、手袋だとヌルヌルして滑るので
この寒空に素手でやるとのこと。そうやって茹で上がったワカメ
は1本1本「軸」と呼ばれる茎の部分を切り離し丁寧に洗濯バサミ
で吊るされていきます。晴天であれば2日ほどで立派なワカメの
干物のできあがりです。こんな手間暇かけて作られていたとは。
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やわらかな春の陽射しをいっぱいに浴びて。
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これがワカメだよぅ!と優しい浜のおじさん。
ワカメが茹で上がる瞬間は見逃したものの、活気ある浜の様子を
夢中で撮りまくっていると、早々とひと仕事終えて一服していた
浜のおじさんが「まだアッチの釜でワカメ茹でてるヨ!」と声を
かけて「コッチ、コッチ」と連れていってくれます。と、今度は
別のおじさんが「コレがワカメだよぅ!」と自宅用に袋に入れた
のをわざわざ出して広げてくれます。「おっ、そのままポーズ!」
と写真を撮ってるとまた別のおじさんが「スグそこの港ン中にも
いっぱい生えてるのが見えるヨ」と堤防を案内してくれました。
腰越の浜の人たちは人情のあったかさでも天下一品!
このあとおばあちゃんからいただいたトレトレの「軸」をサカナ
に海を見ながら味わった一杯・・・・
ひと味違った鎌倉の休日を堪能できました。浜の皆さん有難う。
と、いうわけで第11号リポートはおしまいです。
おつきあいいただき、ありがとうございました。