鎌倉好き集まれ!一止散人さんの鎌倉リポート・第24号(2005年2月15日)

海へと続く道

 何の目的もなく、思い立って海を見に行くことが多い。

 さてどうしてか、、考えてみたら、何万年も前から飽くことなく繰り返されてきた、たくましい波のリズムに惹かれているのかも知れない。自分にもこんな力強さが持てたらいいな、と。

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 昨年秋の極楽寺・稲村ケ崎間。線路と車道がぴったりと寄り添って、江ノ電も、車も、人も海を目指す。三つのスピードがそろったとき、一瞬、違う時間が流れているのではないかと錯覚してしまう。

            
             《海行きの電車 導く鰯雲》  



  
 民家の間からちらっと覗く海もいい。見えないところに無限の広がりを感じられるから。
 このまま海の上を歩いて、大島までいけたら気持ちいいだろうなぁ。


           《短日や 海に光れる 道ひとつ》











 稲村ヶ崎駅そばの洋館。旧市街を出てここまで来ると、残っていること自体奇跡と言えるかもしれない。青空に、鮮やかさを失わないフランス瓦が好対照だ。

           
         《寒天に フランス瓦 赤々と》















 今は、海本来の色が見られる時でもある。透明感のある爽やかなエメラルドグリーンの間を、サファイアのような深い青がつなぐ。産まれかかった波の下から、にわかに湧き立つ、ひと筋の黒い線。単に真っ青と言うだけではくくれない色。
 ベタ凪にサーファーはただ行ったり来たり。サーフボードが、青い糸で水面を織り出す「おさ」のようにも見えてきた。

            
《冬の海 青折り重ね 色数多》


 







 海が見せる表情で一番好きなのは、やはり日没の瞬間。

 日がぎりぎりまで傾いたとき、水に濡らされた砂浜が真紅に染まる。その色がゆれる水面にたゆたいながら、ふっと消えるとき、一日が静かに終わる。地球が安堵に息を漏らしたように。