鎌倉好き集まれ!JUNEさんの鎌倉リポート・第15号(2004年7月31日)

The fortunate

小町通りほぼ中央にある和紙専門店。
全国各地の手漉き和紙ほか、各種cardから、
モビール,タペストリーに至る数々のオリジナル和紙製品が並ぶ。
注目すべきは、店先両端にある小さなガラスのshow box。
その中に、幼少への懐古心を擽る「千代紙の世界」が広がる。
しかし単なる折り紙ではない。
これがとびっきりの芸術作品なのである。

お花見と団子 (4月)
兜と鯉幟   (5月)
青蛙と睡蓮  (6月)
:
童話のように心和むシーンが月代わりで次々と現れる。
どれも目を見張るほどの精巧な出来栄え。
まさに鎌倉 季節の歳時記 集大成。
店の前を通る度つい足を止め、じっと見入ってしまう夢の箱庭。

社頭

婚礼

吉野山 峰の白雪踏み分けて 入りにし人のあとぞ恋しき

かつて白拍子の静御前が、義経との別離の愁いを歌った舞殿。

この日初めて、黒引き振袖の花嫁を見た。
これはかつての武家の花嫁衣裳で、明治・大正時代に再び流行し、
今また人気再熱とのこと。
婚礼の和装着物といえば、白無垢が一般であるが、
この黒という色、白には無い凛とした気品と緊張感がある。
花嫁の艶やかな黒髪と白い襟足。
金糸銀糸を織り込んだ帯と純白の角隠しとの調和。

夏の朝、偶然にもこのように静粛な光景を目にすると、
こちらもビシッと気持ちが引き締まるような感覚さえ覚える。
八幡宮の神楽団による雅楽の調べ。
笙、篳篥、横笛、筝、太鼓によるいにしえの響き。
厳かなる越天楽のメロディーが風に乗り、
源平池の蓮野原を、桜庭の生い茂る夏木立を、
そして清新なる二人の心内をのびやかに通りゆく。
2004年 盛夏 新しい門出。

しずやしず 賤の小田巻くり返し 昔を今になすよしもがな

往時、恋する人への想慕の深さを偲ばせる本宮への石段。
その左脇、樹齢千年ともいわれる大銀杏が歴史を見つめる。

雅楽

鶴亀石

八幡宮境内東方の一角に仲良く並んだ2つの石。
うっすらと緑に苔生すその静寂な佇まいに、
互いへの深い愛情と思いやりを潜める。

相模の国の風土記にこう記されている。

   水をもって石面を洗う時は、
   鶴亀の紋様が輝き現れる

今日という日に相応しき、大変おめでたい石である。
いつからだろう、
夏のある日に決まってこの八幡宮を参詣するようになったのは。

何らかの節目を迎える度にふと訪れたくなる場所。
世俗を離れて、静かに自分と向き合う時空がここにある。

この先いつまでも絶えることなく継続したい年中行事。

これからまた1年、
みんな仲良く健やかに過ごすことができますように。

木槿