鎌倉好き集まれ!JUNEさんの鎌倉リポート・第54号(2005年6月20日)
Hospitality
店先に並んだ野花の鉢植え。
こぢんまりと置かれた木製テーブルと長椅子。
「ここで食べてもいいですか」と尋ねると、
「どうぞ、どうぞ」と明るい笑顔の娘さん。
「配達行ってくるよ、浄明寺」
バイクのヘルメットを抱えて店の外に出てきたおじさん。
「日差しが強いでしょ」とパラソルを立ててくれる。
遠くで微かに踏切の音がする。
チリチリンと走り去る自転車の少年。
フウフウしながら戴く揚げたてのコロッケ。
お次は…と目移りしつつ、厚焼き玉子を一口でパクリ。
「よろしかったら」
絶妙なタイミングで、
おばさんが冷たいお茶をサービスしてくれる。
「こんなのご存知かしら?」
差し出された小さな紙片には、一篇の歌が記されていた。
この『鎌倉は子守歌』生みの親は、
「さとうきび畑」の作詞作曲で知られる寺島尚彦氏。
昨年三月に逝去されたという。享年七十三歳。
「この間、東京で追悼コンサートがありまして…
そこでね、初めて聞いて知ったんですよ…」
梅雨の晴れ間。
青空テーブルにパンフレットをひろげ、
ニコニコと嬉しそうにお話して下さった。
すぐ傍で、腰を屈めて庭木に水遣りをするおばさんの
頭に覆った三角巾が、撫で肩の背中が、手の甲の皺が、
とてもいとおしくみえた。