鎌倉好き集まれ!JUNEさんの鎌倉リポート・第64号(2005年8月9日)
The madder memory
アイツとケンカした。
原因は何だったか…もう忘れた。
たぶん
呆れるほど些細なことだって――
わかってる。
アイツは、
ふてくされた顔で
わずかに間隔をあけてついてくる。
話しかけもせず
振り向きもせず
おろしたての下駄の鼻緒がちょっぴり痛い。
ゴツゴツ デコボコ…歩きにくい石畳。
ずっと向こうまで続くぼんぼりの参道。
いったいどこまで…
うつむき加減のふたり
ただひたすら黙って歩いた。
突然、暗闇の繁みから
一匹の子猫がミャーと足元に擦り寄ってきた。
コイツも淋しいのかな…。
理由もなく ふいに涙がこぼれた。
立秋祭の夜
浮かぬ面持ちで段葛を歩く少年少女を見かけた。
「ごめん」のひとこと 素直に言えたかな。
意地を張らずに ちゃんと仲直りできたかな。
ぼんぼりの幽趣な灯に包まれながら
それだけが いつまでも気になった。