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KIさんの鎌倉リポート No.62(2007年9月12日)


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鶴岡八幡宮のゆうべ 〜秋の婚儀に上古の昔を想ふ〜


9月のある週末,夕暮れ時の鶴岡八幡宮で婚儀の祭式がありました。


階段を降りれば,かがり火に浮かび上がる舞殿。


粛々とした殿中では祭儀が始められようとしています。


まずは斎主が,本殿の八幡大神に祝詞を捧げます。


重厚な声明が静寂な境内にはしっかりと響き渡ります。







つづいて巫女神楽。


榊を携えてゆっくりと前に進み出ます。


「神楽」は文字通り,神様を楽しませるために舞うもの。





古くは「神遊び」などとも呼ばれていました。


先の祝詞が神様をお呼びするものであれば,神楽はわざわざお渡りになってくださった神様をもてなすものといったところでしょうか。

ちなみに,「神遊び」という言葉,沖縄の伝統祭事には「カンアシビ」とか「カムナシビ」としてその言葉が今に残っていますね。


そして盃の儀式。


主賓である新郎新婦に御神酒が勧められます。


御神酒は神様から振舞われるお祝いの一杯なのです


それから一同も盃受し,新郎新婦が誓いの言葉を述べて玉串奉納して儀式は終了です。


鶴岡八幡宮では恒例となった神前結婚式ですが,「祝詞」・「神楽」・「盃拝受」・「誓詞」といった式次第をよく観察すれば,神様が式の最高責任者として新郎新婦の結婚を承認し祝福するという形をとっていることがわかると思います。祝詞で儀式の場に招かれた神様は神饌と神楽で一通りもてなしを受け,次に手前に控える新郎新婦をご検分になって「よし,そなた達の結婚を認めよう(^^)」と神様から新郎新婦に祝盃を賜る。そして最後に新郎新婦が自分たちの結婚を認めてくれた神様に御礼を述べるという具合です。
 八幡宮の場合,新郎新婦の結婚を承認し祝福するのは八幡大神。すなわち応神天皇(ホムタワケ大王)です。考古学者の間では,倭国を大いに発展させた偉大な大王(おおきみ)として認知されているホムタワケ大王ですが,記紀には恋愛エピソードや大のお酒好きだったことなど人間くさい側面もたくさん描かれています。
 中でも特筆すべきエピソードをひとつ紹介しましょう。

 “ある日,ホムタワケ大王は自分の側室として日向からカミナガ媛という美姫を呼び寄せましたが,これに息子のオホサザキ王子(後の仁徳天皇)が一目惚れ。それを知った大王は王子にカミナガ媛を気前良く譲ってあげるという「いいお父さん」ぶりを発揮します。ホムタワケ大王は二人のために結婚の宴を開き,大王自ら長歌を詠んで二人を祝福し,それに応えてオホサザキ王子が感激と御礼の反歌を詠みました。”

 破魔矢のお守りが象徴するように武神として崇められる八幡大神こと応神天皇ですが,なるほど縁結びにも大変ご利益がありそうですね。


倭王だった生前(今から約1600年前)には息子の結婚に一役買ったホムタワケ大王ですが,今はこの鶴岡八幡宮の神様となられて,数え切れないほど多くのカップルの仲を取り持っているわけですね。


台風9号が過ぎ去った後の鎌倉。


夜にはすっかり初秋の気配になった鶴岡八幡宮の境内。


神前のかがり火が秋の夜長を照らし出していました。



(参考文献)
古事記中つ巻 品蛇和氣命(ほむたわけのみこと)
日本書紀卷第十 誉田天皇(ほむたのすめらみこと) (通称 応神紀)



追伸, 鶴岡八幡宮では日暮れ時にしばしば婚儀が行われますね。見るのは今月で2度目です。


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