鎌倉好き集まれ!一止散人さんの鎌倉リポート・第17号(2003年9月30日)

別荘時代幻想 ~長谷・由比ガ浜篇~

 特にこれといった目的もなく散歩に出る場合、自然と由比ガ浜大通りに足を向けることが多いです。個性的な店構えでのウインドウショッピングも良し、美味しいレストランで舌鼓を打つも良し。横道にそれてあちこち見回せば、その時どきの発見が必ずある通りなのです。中でも、この通りに惹き付けられている最大の理由は、古き良き別荘時代への幻想かもしれません。

 ここ榮屋商店もそんな発見の一つ。六地蔵そばの酒屋さんです。一階の店舗部分は改装されているのか、パッと見には分からなかったのですが、二階の軒に目をやると、、昭和初期の香り漂うイチゴ型のオシャレなランプシェード。建物自体はとてもシンプルな造りなので、却って引き立っているような気がします。できることなら、夜、ほの明るく灯った姿を見てみたいものです。 
  
 
 このエリアで別荘時代の面影を残す建物と言えば、まず文学館。他にも長谷子ども会館、現「BAR BANK」の旧横浜興信銀行由比ガ浜出張所と、枚挙にいとまがありません。そんな中でも私の一番のお気に入りがこの一角。長谷東町のバス停近くに、鎌倉駅側から、医院、ガラス屋、金物店と並びます。
 赤茶の綺麗な瓦に、土っぽい壁が味わい深い医院建築。垂木が重厚な日本家屋のガラス屋。二重軒と四角形を三つ並べた意匠が現代的な金物店。互いに引き立てあいながら、個性が光っています。
 別荘時代への思いを強く湧かせるのは、3軒まとまって残っているせいかも、、。昔はどこもこんな感じの町並みだったのでしょうね。
 甘縄神明宮向かいの洋館。ラインのデザインがとても洒落ていて、屋根もどっしりと大きく、華やかさと重厚さのバランスが取れたとてもいい建物だと思います。
 これは去年の今ごろ描いたもので、当時壁はこんなライトブルーだったのです。けれど、この間行ってみたらラインと通気孔は緑、他の壁は白で塗り替えられ、より華やかに変身!画一的な今の建物では、なかなかペンキの色一つだけでこんな変化を出せないのではないか、と感じたほどの鮮烈な印象でした。
 長谷の柴崎牛乳本店。かつて七里ヶ浜高校のそばにあった牧場は、この店が営んでいました。二階部分や建物後部は改築されているようですが、正面の入り口は格子窓の模様といい、ライトといい、良い雰囲気が残されています。
 そういえばこの店名の文字、前は「左→右」に並んでいたような、、。その頃と比べたら塗りなおしたような様子なので、ひょっとしたらその時、向きを逆に直したのかな?だとしたら、粋な計らいですね(^.^)
 きっとここの牛乳が、別荘族の喉を潤したのでしょう、、。
 その入口脇には「電話・18番」のプレート!電話がたった2ケタでかかってしまう時代があったのですね~。ご近所さんが、電話を借りに行ったりしたのでしょうか。
 
 迷惑メール対策で、何十文字ものアドレスを取る今からは、想像もつかないシンプルな時代、本当に時間がゆっくり流れていたのでしょうね、、。