鎌倉好き集まれ!一止散人さんの鎌倉リポート・第18号(2003年10月15日)

鎌倉八景今昔 其の一

 去年とある古書店で、こんなものを見つけました。

 「湘南史跡 鎌倉八景」

 鎌倉の八景を集めた、戦前の絵葉書です。これは、その1枚の「霊山(霊仙)の白雨」。
坂ノ下のあたりでしょうか。小舟一隻の寂しげな風景を写した写真の隣には、テーマにちなんだ俳句が2句。

 ◎霊山や 夕立雲の 低う行く   青 波
 ◎夕立は 虹とはなれり 霊山に  松 葉

 情景が浮かぶようで、なかなか味わいがあります。

 霊仙山は、極楽寺坂切通しの南に位置する山で、最近では極楽寺支院の仏法寺跡の発掘でも話題になったところ。この絵葉書に触発されて、今の鎌倉八景の姿を少しずつ見てみようと思ったのでした。
 
 今回は極楽寺駅から南下、霊仙山の麓をぐるっとまわって坂ノ下へ抜けるルートです。針磨橋から谷戸沿いの住宅街に入ったところで、木の電柱を発見。それも沢山の電線を渡した立派なもの。市街でも少なくなってきているのに、よく生き残っている感じ、まだまだ現役バリバリの風格がありました。
 極楽寺から坂ノ下へ入ると、霊仙山の東の麓に出ます。車の多い134号線を眼下に、平行して一段高い道を少しずつ下っていきます。広々と海が見渡せる開放感がとても気持ちいい道。ススキがあちこちにそよいで、すっかり秋の風情になりました。
 この写真、背中側の中腹が仏法寺跡です。
 後はてくてく歩いて長谷駅へ。

 駅も大分近づいた御霊神社のそばに、何故かとてもお気に入りの一角があります。
 亀甲模様の戸袋が綺麗な民家と、真っ白く塗られた真新しい感じの蔵の取り合わせ。色のコントラストに凄く惹かれます。坂ノ下の路地は、複雑に入り組んでいて景色に変化があるのが面白いですね。
 オフ会のあった懐古亭のチョッと先にも、とても洒落た黄色い洋館を発見!今まで何故か気づかないでいた、今回最大の収穫でした。
 陶印連作「鎌倉八景」より「霊山白雨」。

 鎌倉は画だけでなく、書や篆刻の題材にも事欠かないので、本当にありがたい街です。作品を作るたびに、この街に対する愛着も、どんどん増してきているのを実感します。