鎌倉好き集まれ!JUNEさんの鎌倉リポート・第10号(2004年6月25日)

In the old days

しとしと雨降る日曜日の午後、
下ろし立ての薄桃色の傘をさして
天然酵母のパンを買いにいく。

こんな天気だからこそ、
つい行きたくなる、そんなとっておきのお店。

思い立ったら即吉日。
逸る気持ちを抑えつつも、
トンネルを抜ける頃には
いつのまにか小走りで駆けてゆく
佐助の坂道。

途中、偶然見かけた紫陽花も
ほら、急いだら危ないよって
ニコニコ微笑みかけてくる。

道端

Cafe Takaraya

御成町商店街にあるカフェ兼パン屋さん。
温もりの木棚に焼きたてのパンがコロコロと並ぶ。
酵母特有の酸味と、焼き上がりの香ばしい匂い漂う店内。
ど・れ・に・し・よ・う・か・な♪
あれもこれもと好きなパンを選ぶ楽しさったら。

アルミ製の受け皿とトングは、
今は懐かし小学校の給食で使用していたものと同じ。
これらを手にした瞬間、小学生の自分にタイムスリップ。
苦手だった揚げパンの日の憂鬱、
身体に大きすぎてダブダブだったかっぽう着、
みんなの大好きなカレーの鍋に
ポチャンと眼鏡を落としちゃったエピソード。

私の一押しは、クロワッサン。
ギュウッと凝縮された全粒粉の食感。歯ごたえは抜群。
コンコルド広場のパリジェンヌもきっとご満悦のはず。
パン焼きの趣味が高じて
ぜひこちらでお仕事がしたいなぁと思い
こっそり聞いてみたことがある。

ベンチタイム含め、下ごしらえの準備は、
なんと、未だ明けきらぬ朝の3時から。

プラムやマスカット、沖縄の泡盛といった
数々の独創的な酵母を考案し試作を重ねる
好奇心旺盛な若い女性オーナーはこう語った。
オリジナルの酵母の熟成から
じっくりと時間をかけた発酵までの工程こそパンの宿命。
最も大事なポイントだからこそ手を抜くことはできないと。

-SINCE 1948-の深重が螺旋を描いて今に継ぐ。

焼菓子

窓辺

入り口左奥の木の階段を上がる。
とそこには、
古き小学校の学び舎を思わせる空間が広がる。
木造の教室には、板張りの床、木の机と椅子。
中央には、アンティークなストーブが佇む。

ギシギシと軋む窓の木枠のわずかな隙間から、
遠く江ノ電の警笛を聞く。

店内を静かに流れるボサノバのメロディ。
芳しいコーヒーを戴きながらじっと耳をすませて。
雨あがり。
近所の小学校から下校を告げるチャイムの音が聞こえてきた。
今日は、少し寄り道して帰ろう。

六地蔵辻の一角に、ぽつんとリンが鎮座する。
夕間暮れ、チーンと澄んだ清らかな響き。
傍らで松葉菊がちょこんと彩りを添える。

西の空、雲の切れ間からわずかに夕陽が差してきた。
今夜は、ワインとチーズで
去りゆく梅雨の季節に乾杯!

スライスしたカンパーニュに
自家製ピクルスの香気を添えて。

寄り道