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JUNEさんの鎌倉リポート No.13(2004年7月16日) |

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The early bird catches the worm.
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 化粧坂切通
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早朝の山道を歩く。 見上げれば、雨露に濡れ、黒く立ちはだかる岩肌。 次に踏み出す置き石を選び、つるりと踏み外さぬよう、 一歩一歩ゆっくりと登ってゆく。
途中、呼吸を整えつつ、後方を振り返る。 渓谷の滝壷をそおっと覗き込む感じ。 ブラックホールのようにぽっかりと歪んだ窪み。 どこまでも暗く、深く、down,down,down・・・。
どこからともなく 白い靄が、行く手をふわりと包み込む。 ふと、伊集院静さんの小説「白秋」を思い出した。
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 木の根
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この小説は、作家の実体験に基づいているとか。
鎌倉の山を歩いていると急に雨に出くわし、 小屋の軒下で雨があがるのを待っていると、 ほどなく白い影が二つ、幽霊のごとく浮かび上がった。 白衣の老婆と若い着物姿の男の影。 彼等はすうっと谷戸の方へと消えていった。
幽玄夢幻の純文学であるが、 鎌倉の花の色や香りが随所に漂う。 まるで、小説版「鎌倉ガイドブック」。
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一昨年の夏越祭の夕べ、 伊集院静さんのぼんぼりを見た。
今は北国に住んでいるが、 時折、鎌倉で暮らしていた頃を思い出す。 由比ガ浜の波や、八幡宮の花々を想う。 あの街は、そういう所だ。
見上げれば、 萌黄の柔らかな葉の陰に、赤い小さな実がたくさん。 ふっくらと瑞々しい木苺たち。
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 木苺
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 源氏山公園
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ようやく歩道に出た。 ザザッ ザザザッと音がする。 足元には、掻き集められた枯葉の小山が点々と。
目線を向こうへ移すと、 頭に手拭いを被り、竹箒を手にした 絣のモンペ姿の方々が、黙々とお掃除。 まだ朝の9時前。時折、小鳥の声が木霊する。
こうしていつもお手入れしてくれる方々があっての自然。 縁の下には、鎌倉を支える様々なひとがいる。 心から感謝の意をこめて、ペコリと頭を下げた。
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源氏山の集落を抜けると、 避暑地の草原を思わせる笹野原が広がった。
白い山百合の群生。 みな一方向に顔を揃えて咲いている。 こうして柵を越え、 遠目に山百合を臨む光景も一興。
今、林の奥でカッコウが鳴いた。
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 山百合
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