鎌倉好き集まれ!JUNEさんの鎌倉リポート・第19号(2004年8月28日)

In late summer

衣張山

浄妙寺本堂より南方、青空に緑葉の山々を望む。
わずかに高く聳えるは、標高121m余りの衣張山。

鎌倉幕府の時代、
太陽がじりじりと照りつける真夏のある日、
頼朝がこの山を雪山に見立て、屋敷から眺めながら歌を詠み、
酒宴をひらいて夏の涼をとったという。

京都にも同じような伝説をもつ山(衣掛山)がある。
こちらは足利義満が金閣寺裏山に衣をかけて楽しんだという。
どうやら当時流行(はやり)の風習であったろうか?
とはいっても、当時の絹といえば、
米や塩と並ぶ高貴な代物だったはず。
なんとも源氏一門の「時の権力」を想わせる。
本堂左手奥に、しっとり落ち着いた風情の庵がある。
ここはかつて僧たちが集い茶を喫したという喜泉庵。
白い石庭の片隅には、今は珍しい水琴窟がある。
涼を求め、暫し夕立を待つ。

整然と美しく並んだ畳表、滑らかに磨かれた梁と柱。
蝉時雨 枯山水の庭を眺めながら、香り高いお抹茶を戴く。
なんて心静かに心安らぐひととき。
お給仕の方々の清楚で凛とした更紗の作務衣姿は、
石庭に降り注ぐ、眩い夏の光に溶け込むよう。

喜泉庵

百日紅

紅色鮮やかに燃ゆる百日紅の木。
唯我独尊、個性の強いその姿形は青い空によく映える。

しかし見れば見るほど不思議な木である。
これほどまでに酷暑の最中にも、
日に日に増して元気溌剌と天上へうねりをあげる。
まるで「ファイト一発!」の栄養ドリンクの如し。

う、うらやましい・・・。
こちらは既にバテバテ、ヘロヘロなのに・・・ふぅ~(汗)。
その漲るパワーを少しだけ分けて欲しいなぁ・・・もぅ~。
木漏れ日をつたいながら歩く坂道。
本堂裏手の枕木の階段を登りつめると、
大正11年に建てられた白壁の洋館が現れる。
切妻屋根の風見鶏がくるくる風と戯れ、
出窓越しに白いレースのカーテンが揺れる。
ここが噂の「石窯ガーデンテラス」。
なるほど、オープンテラスの向かいに、
半円形にぽっかり大きく口を開いた石の竈が見える。
ほのかに焼きたてのパンの香り漂うハーブガーデン。
リニューアルしたメニューを見てちょっと溜息。
少し敷居が高くなったような・・・。

この度、
浄明寺の山々を一望できる小さな庭園が新たにできた。
その散策路、足元に見つけた栗の実。
一つ拾い上げてイタッと小さく悲鳴をあげる。
未だ小さき萌黄の毬に、収穫・実りの秋を恋う。

栗の実

左可井

炎天下の金沢街道を駅へと歩く。
パタパタとあおぐ扇子の風も心許なく、
素直にバスに乗ればよかった・・・と後悔。
しかし、我慢、忍耐の末にはいいこともあるもの。
あったあった、浄明寺2丁目に隠れオアシス発見。

お座敷で隣り合わせたお客さんと
「これからどちらへ?」とくつろいでいるうちに、
お待ちかねの「そうめんセット(1260円)」が運ばれてきた。
青い竹筒にこんもりと入ったそうめん。
ふっくらとやわらかい穴子丼。
小鉢にはピリリと生姜のきいた茄子揚げびたし。
付出しの厚焼き玉子は絶品中の絶品。
千円を超えると「高い」と思いがちなランチも、
ここでは治外法権。不覚にも「安い」と感じられるほど。

暑気払いには最高!のおもてなしに
声を揃えて「ごちそうさまでした!!」