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JUNEさんの鎌倉リポート No.20(2004年9月4日) |

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閉門前の海蔵寺境内に響く竹箒の音。 参道に作務衣姿の住職さんが、 慣れた手付で黙々とお掃除。
もうすぐ日が暮れるなぁと思いながら空を見上げる。 西方にうっすらと棚引くは茜色に染まる鱗雲。 裏手の林の奥で、 過ぎ去る夏を惜しむかの如く、蜩がカナカナ・・・と鳴く。
山門前の石段に若枝を揺らし、 ちらほらと咲き始めた紅萩。
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 萩
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 芙蓉
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「最近は、(みなさん)カメラ撮影に夢中で、 ちゃんと(ご本尊に)お参りするひとも少なくなりました」
何気ない住職さんの呟きに、はっと息をのむ。 忘れていた、大事なことを。
そうだ、 この歴史ある伝統を、四季折々の草花を、 そして、心やすらぐ静寂を・・・ これまでも、そしてこれからも ずっと見守り続けるは如何に言はんや。
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生まれて初めてこの花に出会った時、 その名の珍しさを飛び越え、 なんて端正な《型》を持つ姿だろうと感じ入った。
正式和名は小紫式部(こむらさきしきぶ)。 細い枝に、しっとり艶やかな小さな実をたわわにつける。 沈む夕陽に幽かに照らされ、この日を終える初秋の彩り。
紫式部の実のあまたなる夕まぐれ (中村路子)
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 紫式部
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 和らぎ
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海蔵寺からの帰り道。 小さな踏切を脇道にそれ、晩御飯のおかずを買って帰ろう。 雪ノ下の住宅地にあるお惣菜とお弁当の店「和らぎ」。 その名の通り、親子二代で睦まじく営む温かい雰囲気のお店。 揚げ物は旦那さんにお任せ、御内儀さんは明日の下ごしらえ。 体格のよい息子さんは何と“出前”をご担当。 「まいど!」 娘さんにニッコリ笑顔で迎えられ、つい嬉しくなって、 「アジフライ、もう一枚頂戴!」(こんな衝動買いもある・・・) プ〜ンと風に漂うアツアツ揚げたてフライの匂いに、 あらら、お腹がグゥーと鳴った。
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今なお現存する鎌倉唯一の尼寺 英勝寺。 三葉葵の総門前を通り過ぎると、薄の穂が風にそよいでいた。
ふと、仏語《衆生》を思う。 生きとし生けるもの。 人も動物も昆虫も、そして草木さえも 皆同じ地平にある。 自分は自然の一部分であり、自然の摂理の中に在る。
人皆は萩を秋と云ふよし我は 尾花が未を秋とは云はむ (万葉集)
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 薄
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