鎌倉好き集まれ!JUNEさんの鎌倉リポート・第24号(2004年10月2日)

It takes all kinds.

9月半ば、比較的静かな仲秋の鎌倉を歩く。
背筋を伸ばし、大きく手を振りどんどん歩く。
西へ東へ、思いのままにずんずん歩く。

真っ先に目にとまった境内の一画。
見慣れている暗紅色の水引とは一味違った趣。
それもそのはず、
水引はタデ科であるに対し、こちらはバラ科の多年草。

水色の空にうっすら広がる筋雲。
春想わせる ふんわり和らいだ風情もまた、いとおかし。

【金水引】 AM9:40 大巧寺

【緋合歓】 AM11:10 収玄寺

一目見た瞬間、咄嗟に浮かんだ数々の思惑。
 これって、画材屋で売ってる刷毛に似てない!?
 確かどこかでこんなアクセサリーを見たような…?
 お財布やポーチに付けたらきっと可愛いらしいかな♪

初夏に咲く淡いピンク色の合歓の花を
そっくりそのまま縮小させたかのような
愛敬豊かに、親近のイメージ。

花の名前を忘れないように、
数度となく口の中で繰り返し呟く。
暫くして「じゅげむ じゅげむ・・・」
あれれ?何か違う…んじゃない…?
この花を目にすると、母の郷里信州諏訪を思い出す。
八ヶ岳の麓、中央線の線路脇の土手に、紫苑が秋風にそよぐ風景。

郷里を去る列車が、無人駅を発車して間もなく、
うっすらと車窓に映った人影。
遥か、唐松林を背にした土手に立ち、両手を大きく振る祖父母の姿。
その傍らに、紫苑が静かに揺らいでいた、茜色の夕暮れ。

列車がトンネルにさしかかり、並んだ2つの影が、
滲んで、やがて薄れゆくまで、
「ずっと元気でいてね、また来るから」と呟いた、あの秋の日。

【紫苑】 PM13:00 海蔵寺

【紫式部】 PM14:10 浄光明寺

これまた初見。
枝の先端に向かって徐々に色付く小さな液果。
萌黄から深紫への豊かなグラデーションは、どこか神秘的。

暫く見つめているうちに、
この繊細なる濃淡加減が、Darwinismに重なり合う。

オギャアとこの世に生を受けてから、
ゆっくり大人へと成長していく過程が、今、一目瞭然に。
まる一日、自身の足だけを頼りに、歩いて歩いて歩き回って
喉はカラカラ、汗びっしょり、おまけに膝はガクガク…。
きざはしに足を投げ出し、今日出会った花々を一つずつ思い返す。
そして斜陽の空を見上げ、金子みすずの詩を想った。

 私が両手を広げても、お空はちっとも飛べないが、
 飛べる小鳥は私のように、地面をはやくは走れない。

 私がからだをゆすっても、きれいな音は出ないけど、
 あの鳴るすずは私のように、たくさんな唄は知らないよ。

 すずと、小鳥と、それから私、みんなちがってみんないい。

まさに、It takes all kinds to make a world !

【秋冥菊】 PM15:50 瑞泉寺