萩の残花がまだ見えていたから、 あれは秋も深まる10月初旬と記憶する。 あの日この場所で、その《ひと》に出会った。 「お一人ですか?」ふいの背後の声に振り向くと、 黒いknit capを頭に被り、杖を手にした男性が立っていた。 「お好きですか?この庭・・・」 まるで独り言を囁くようにその男性は静かに話し始めた。
源氏山を含むこの一帯は、源家父祖伝来の地であること。 頼朝が鎌倉入りした1180年、ここに幕府を構えようとしたこと。 しかし、既に亡き父義朝の御堂があり、 館の用地には狭すぎるので断念したこと。
首を傾げ、頭をポリポリ・・・苦手だった歴史学を総ざらい。 秋風吹く青天井の教室は、ちょっぴり寺子屋風。
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 山門
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