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JUNEさんの鎌倉リポート No.34(2004年12月16日) |

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建長寺方丈。今尚変わらぬ整然とした佇まい。 以前、毎週末ここで座禅をしていたことを思い出す。
夕刻 閉門間際、どこからか、一人,二人と集まってくる。 斜陽差す障子をスルリと開け、軽く会釈し座敷に入る。 奥の襖から座布団を取り出し、先客の隣に並べて敷く。 二つ折りしたその上に、胡坐を組んで静かに座る。 薄目をあけて、畳ヘリに視線を落とす。
晩夏 聞こえてくるのは、カナカナカナ・・・と虫の声。
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 方丈(龍王殿)
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 寺庭
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方丈裏の回廊から、夢窓国師の作とされる庭園を望む。 心字池に浮かぶ孤島。 中央にしなやかな橋を架け、池辺には松や槇,躑躅を配す。
座禅を終え、ほのかに揺れる蝋燭の炎をたよりに、 住職による短い説法を拝聴するのも楽しみの1つ。
本来の自分を失えば、全ての事柄も見失ってしまう。 心の真髄を見つければ、人生の道も見えてくる。
静寂な水面に映る茜雲。
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気まぐれに、人気無い脇道にそれてみる。 せせらぎ伝いに小径を行くと、山門に2つの人影。
その一人、両手を大きく振りながら、まっしぐらに駈けてくる。 数m先に近づき、顔形を確認するや否や「あれ〜っ」と声を上げた。 それはまぎれもなく、英国在住時、同じ学校に通っていたKさん。 確か、名古屋に実家があるって聞いてたけれど・・・。 卒業したら、また中国で仕事したいって言ってたっけ・・・。
この広い宇宙、太陽系は地球という惑星の、 日本という国土の、鎌倉は建長寺という1地点の、 数多い塔頭の1つ「回春院」での出来事。
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 回春院
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 正統院
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彼女の隣に、眼鏡をかけた小柄な男性。 弾む会話に一言も口を挟むことなく、静かに佇んでいた。
なんて対照的・・・! これが初対面での彼の印象。 でも誠実そう・・・☆ これが次なる印象。
本国仕込みの中国語を巧みに話し、 次々に出される課題レポートを英語でスラスラ書いては提出し、 街はずれの大衆Barで、深夜までギネスをガンガン飲んでは、 「明日は明日の風が吹く〜♪」なんてケタケタ笑っていた・・・ そんな社交的で好奇心旺盛な彼女とは、 明らかに相反するタイプの彼。
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「また会う日まで・・・。」 二人に別れを告げ、薄暗がりを半僧坊へと急ぐ。
あまりに衝撃的な再会に、 天仰ぐほどに急傾斜の石段に、 ただ呆然と、眩暈にも似た感覚で気が遠のく。
この世って、 とてつもなく広いようでいて、実は意外に狭いもの。
最上段の天狗の嘴がわずかに動き、ニヤリと笑う。 この不思議な偶然の真相、狛犬のみぞ知る。
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 狛犬
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