鎌倉好き集まれ!JUNEさんの鎌倉リポート・第56号(2005年6月27日)

The Table Art

「やまと新聞」への挿絵がきっかけに

 
 終戦後まもなく
 一人の画家が晩年を過ごした鎌倉市雪ノ下。
 
 小町通りを僅かに西に逸れ、
 小さな美術館がひっそりと建つ。
 
 
 
 雨に濡れるあじさいに心惹かれ。
 瓦屋根を流れ落ちる急雨に耳を澄ませ。
 
 季節の風物詩に画興を掻き立てられた清方画伯は、
 「夏」を画題にした傑作を数多く遺した。
 
    * * *
 
   夏の昼下がり
   百日紅の木陰に荷を下ろす行商の風鈴屋。
   
   そのすぐ傍で、
   浴衣姿の愛らしい少女が母親に
   「どれにしたらいい?」と微笑む《朝夕安居》

好みの草花を自宅の庭に

    * * *
  
   人情味あふれる長屋の喧騒。
   「鰯いらんかぇー」
   魚屋の売り声響く路地。
   
   通りの向こう 下駄の音カラコロと
   毬栗頭の少年が、竹笊を抱えて走り寄る《鰯》
   
    * * *
   
   御簾の内
   瓦を流れる雨音に耳を傾け、
   初夏の風情を楽しむ髪結いの女性。
   
   団扇に添えた白い華奢な手が
   着物の裾からのぞくスラリと細い脚が
   実に艶かしい《五月雨》
   
 

絵心誘う 《紫陽花舎》

沙羅

  
 
 『清方描く四季 -夏-』 は
 鎌倉市鏑木清方記念美術館にて
 平成17年7月24日(日)まで。